作品によせて [4]

Paul Panhuysen パウル・パンハウゼン(参加アーティスト)

メカニカル雅楽と電子音の授業風景」は、1994年以来、私が作った6番目のメカニカル・ドラム・オーケストラである。これまでの作品はそれぞれに異なっている。そしてまた、いずれも常に曲想を変えながら、エンドレスに演奏するものである。従って、これらの作品自体が楽譜であると考えることもできるだろう。

今回のオーケストラは、空の12のカーオイル缶で構成されている。天井の下には12本の弦が水平に張られ、教室の中央から黒板の上へと束ねられている。12個のオイル缶は黒板のある壁に対して平行に、床に2列に等間隔で配置されている。缶の下にはツメが置かれて、床から少しだけ浮いた状態となっている。それぞれの缶の真ん中には、垂直にスチール製の弦が取り付けられ、1分間に2回転するゆっくりした直流モーターによって、プレクトラム(ツメ)がこの弦を弾く。最初の缶は1個のプレクトラム、2番目の缶は2個のプレクトラム、3番目の缶は3つのプレクトラム、12番目の缶は12個のプレクトラムをもっている。缶内部から張られた垂直の弦は、空間の水平弦と接続し、黒板の上の磁石のピックアップまで渡って終わる。これらのピックアップは、12本の弦のシグナルを変換する12個のエフェクターへとつながっている。

こうした構造によって、このインスタレーションは、缶からの生の音と、弦を伝わって増幅・変換された音との、双方の音響による表現が可能となった。インスタレーションに装備されたデジタルタイマーは、クリスチャン・ズワニッケン氏の助けを借りて作られたものであるが、このタイマーが、音の奏でられる時間(生の音/変換された音の)と交互に生み出される3分間の沈黙をつくりだすことを可能にしたのだ。そして、展覧会が開催されているあいだじゅう、このプログラムは繰り返された。

「この音は日本の雅楽を思わせる」と酒井信一氏は私に告げたのだが、そこから私はこの作品のタイトルを決めた。
そして、最後に2枚の写真を添えることによって、東京でのこのインスタレーションは完成した。それはずっと以前の十思小学校の、この同じ教室で行われていた音楽の授業風景を写した古い写真だった。

「3分間の沈黙のために」に関係した人々すべての友情、この場所、この学校の建物と教室、私の作品のイメージと音、桜の花の季節、それらのすべてが感謝と幸福を感じさせる記憶として私の心に残されている。

2001年8月 アイントホーフェン

『3分間の沈黙のために……人─自然─テクノロジーの新たな対話』p.24-25

関連展覧会:
  • t12 日本・オランダ現代美術交流展 「3分間の沈黙のために……人・自然・テクノロジーの新たな対話」(東京)


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