ギャラリー・アーカイブ・プロジェクト G・A・P

■サイト制作の経緯と趣旨

このギャラリー・アーカイブ・サイトは、2016年に閉廊した「ギャラリー・サージ」ディレクターの酒井信一と私、安藤泰彦との共同作業によって、2021年2月に制作が開始されました。

酒井信一は1984年から2015年にかけての約30年間、「画廊パレルゴンⅡ」と「ギャラリー・サージ」という表現の場を形作ると同時に、それらのギャラリーを活動の拠点とする数多くの国内外の美術展を企画・実施してきました。またそれと並行して、「もの」の記録というよりは、むしろその場で生じた「展覧会という出来事」の記録として、展示作品の写真や資料を記録し、保存することを自らに課していました。それらの記録は「ギャラリー・サージ」の閉廊前後からデジタル化の作業が続けられていました。これらの地道な作業を通して保存された膨大な資料を元に制作されたのが、このアーカイブ・サイトです。

ネット上にアーカイブ・サイトを立ち上げることにしたのは、幾つかの理由があります。一つは、作品写真を中心とする過去の展覧会資料に多くの人がアクセスしやすい環境をつくることでした。80年代から90年代を概観する評論や回顧展はあるとしても、あまりにもその当時の基礎資料に触れる機会が少ないように感じていました。当時を俯瞰し総括する前に、まずそこで現れた様々な作品のかたちをできる限りそのまま提示することを通して、その時代の状況——その時を現在(いま)として生きる多くの人の運動——が見えてくるように思えました。

もう一つは、過去の写真資料をデータベースのような形で保存し公開する手法への関心です。90年代以前の多くのギャラリーがそうであるように、展覧会の記録がデジタル化されているものは多くはありません。またデジタル化がなされていたとしても、それが一般の目に触れるかたちになっているのは、なかなか目にすることがありません。ネット上に、アーカイブのフォーマットが提供されることにより、デジタル環境に不慣れなギャラリー関係者自身が、所有する展覧会資料をより容易に公開することができるのではないかと考えたのです。

このサイトで纏められたのは、「画廊パレルゴンⅡ」と「ギャラリー・サージ」を中心とする、ある独特の活動と言えるかもしれません。しかし、そこには単に作品を展示し販売することを主眼においたギャラリーや、「貸しギャラリー」という枠組みでは捉えられない、一つの「運動体」としてのギャラリーの活動があります。この「運動体」に乗り込みあるいは絡み合うかたちで作家固有の運動が重なり合っています。このようなギャラリーのあり方自体も、現代に投げ返される問題の一つであるように思われます。

■サイトの仕様について

このサイトは、WordPressによって制作されています。データベースから情報を引き出し画面上に提示するというその仕組みは、作品資料を元にしたアーカイブ・サイトには理想的なものでした。アーカイブという作業自体は手間のかかる時間的なプロジェクトと言えます。このサイトは、完成形を提示するというよりも、随時情報が追加されていく進行形のアーカイブというかたちをとっています。作品データを所有するギャラリー関係者が「投稿」という形で情報を随時アップすると同時に、その資料が画面デザインに反映されることが目指されました。

仕様:WordPress theme:lightning with VK All in One Expansion Unit plug in : Smart Custom Field, Intuitive Custom Post Order, Easy FancyBox, User Role Editor etc.

■付記

酒井信一は、2021年9月に死去しました。
アーカイブ作業にあたっての彼の言葉を記します。
「本作業は、いわば二つの画廊の記録にすぎない。しかし、同時にその多種多様な作品群が、画廊を中心とした一時代の精神を鮮やかに映し出すものとなる事を願う。」

文責:安藤泰彦(現代美術:KOSUGI+ANDO)

※サイト内の写真撮影者、作品説明などでの表記「S」は、酒井信一を示しています。


ギャラリー・アーカイブ・プロジェクト G・A・P(酒井信一・安藤泰彦・北山理子)