作品によせて[5]

土屋 穣(参加アーティスト)

私は作品の製作過程に現れる様々な現象に対して自らの視点で方向づけ、意味づけることに最大の注意をはらう。私はここ数年の作品を製作するにあたり、空間と物体との関係について次のように考察する。

表面は 内部構造により 位置決定される。
表面は 内部内の状況を顕し 内部の構造の変化により 表面も変化する。
物体と空間との緊張ある拮抗、 その振動作用。
物体は いっぱいに凝縮された空間
空間は いっぱいに拡散された物体
我々の成す術は この曖昧を位置づけること。 そして尚 見つめること。
私が作品について考察する際に 常に意識化にあること。

私の作品の表面はパラフィンという素材により視点が狂い、そのパラフィンの半透明な内部と表面の位置が視覚として捉えにくい。その現象は形態を歪め 落とす陰影は微妙に揺らぐ。そして、その中に組み込まれている構造はパラフィンを透過して表面へと滲み出てくる。私の作品の構造は、連続あるいは連鎖性を持つものとして位置づける。それは一単位の集合であり、そのひとつは断片であるかのようである。そのひとつは全体をも包み込む断片であり多種多様の植物で覆われている野山を見る。遠くにその山を眺めるとき ある厚みのある表層を持つ量塊として現れる。また、その野山の中に入り一部に近づくと その多種多様の差異をどこまでも細かく見つめて行くことができる。さてこの関係を作品の構造として考えるとき 作品のあり方が中間に位置すると言うのではなく、この言わば極と極の間をそれぞれの極限へ侵触すること これを私の構造観として位置づけたい。

『ASAKUSAÉ(浅草へ)/Orientation 50°Nord』p.46

関連展覧会:
  • t01 日本・ベルギー現代美術交流展 「ASAKUSAÉ 浅草へ」(日本展)
  • t02 日本・ベルギー現代美術交流展 「Orientation 50° Nord」(ベルギー展)


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