今回のブラウンセールスの展示は2つのプロジェクトから成り、その１つ "Cursor" は、鑑賞者がコンピュータ上で仮想の構築物を操作し、要素を付け加えたり、位置を動かしたりすることができるインタラクティブな作品です。彼は文章編集と建築行為とのアナロジーに注目し、それがコンピュータによる編集と設計にとってかわることによって、ヨーロッパのある種石を刻むような歴史の重みから開放されたと主張します。その際 Cursor＝カーソルは、建築における居住者になぞられるでしょう。このプロジェクトはウェブ上でも展開され、情報空間と現実空間とをつなげます。
他方は、ベルギーの地元で彼が世界とつながる上で必要なケーブル等、実際のコネクションを集めデジタル編集したものを、一種のカリグラフィーとして表現します。いずれも、今私たちが考えざるを得ないバーチャルとリアルの関係、あるいはテクノロジーと精神の歴史的関係を問うもので、ヨーロッパ哲学、生物学、メディア・テクノロジーを横断する彼の観点は、日本の私たちにもそれらの再考を促すことでしょう。（S）

（photo：S）