“マグネティック・ガーデニング 耳のために”
鈴木 健雄+竹田 賢一
会期:1998年7月6日---7月11日
作家名:鈴木 健雄+竹田 賢一
スズキ タケオ+タケダ ケンイチ
形態・素材:パネル、磁気テープ、ヘッド
(photo:S)
作家コメント:
マグネティック・ガーデニングの最初の胚ができたのは、ぼくたちが1979年から始めたヴェッタ・ミュージック・ワークショップの中でだった。鈴木がワークショップに持ってきたノートの1ページに、カセットから引き出されたマグネティック・テープが貼りつめられていた。携帯テーププレーヤーから引き出した再生ヘッドでそのテープの面をこすると、当然ながら録音された音が聞こえる。しかし、プレーヤーが再生するときは、録音されたときと同じ方向とスピードを保ってトラックを忠実に追うのに対し、ぼくたちの指先につままれたヘッドの動きは気まぐれだ。どの音がどんな音として再生されるのか、プレーヤーに任せては決して得られないコントロールを発揮できる一方、何が聞こえてくるかこすってみなければ分からない偶然の支配をも甘受しなければならない。
今回ぼくたちが制作するものは、カセットテープのフィールドである。濃茶から黒灰色のその色は、磁性体の酸化鉄やコバルトによるものだが、メタリックではなく、むしろプラスティックな輝きを帯びて、肥沃な土壌を思わせないだろうか。ヴェッタ・ミュージック・ワークショップに始まり、各々のさまざまなパフォーマンスの記録、自宅でマイクに向かって吹き込んだもの、ダンスや演劇などのために制作したテープ素材、そのような作品をつくるために収拾したあらゆる種類の音声・音響。ぼくたちが長年にわたって(for years)、耕し種を蒔いてきた畑なのだ。そこからどのような芽をふかせるかは、再生ヘッドを握ったあなたの指先にかかっている。(文責・竹田)