作品によせて [7]

KOSUGI+ANDO 小杉 美穂子+安藤 泰彦(参加アーティスト)

反復 ~こんな夢を見た~


こんな夢を見た。
一つの明るい部屋。
細長い部屋の突き当たりに一つの窓、窓の外で一枚の黄色い布が風に揺れている。
外は明るい。
壁面に黒板。
教室。
部屋の中に、ゆっくりとしたスピードで回転している機械装置。円柱状の回転台。
台上には一台のビデオカメラが取り付けられ、壁面を見回すように回転している。

黒板に向かい合った壁面に一枚のモノクロ写真。
部屋の窓。窓枠に掛けられた一枚の布。

黒板には何が描かれていたのか?
◆◆
インスタレーションとは複数の時間性を畳み込んだ表現形式です。一方に音楽や映画、物語りといった時間的な表現があり、もう片方に彫刻や絵画、インスタレーションといった空間的表現があるのではありません。すべては、時間の流れと共に、観客の内に醸成される時間的な表現なのです。ただ、それらは異なった時間軸を持っています。インスタレーションは、それを体験する者の、予想(プロスペクト)と回想(レトロスペクト)によって織りなされますが、その時間軸は、見る、歩くといった身体動作、行為によってあなたに委ねられます。それは、一つの夢の舞台、少し夢の練習を重ねれば、ある程度自由にあなたの位置をコントロールできる、そんな夢にも似ているようです。


こんな夢を見た。
一つの暗い部屋。
部屋の中に据え付けられた円柱状の機械装置。
台上の一台のビデオプロジェクターが、細長い部屋の壁面に窓の映像を投影している。
窓枠に垂らされた一枚の黄色い布が風に揺れている。
外は明るい。
壁面に黒板。
教室。

機械装置がゆっくりと回転し始める。
窓が動き始める。
部屋の壁に、別の部屋が投影されていく。

黒板に向き合った壁面に一枚のモノクロ写真が浮かび上がる。
部屋の窓。窓枠に掛けられた一枚の布。

黒板に描かれていく二重螺旋。
◆◆
インスタレーションとは複数の空間性を畳み込んだ表現形式です。一方に音楽や映画、物語りといった時間的な表現があり、もう片方に彫刻や絵画、インスタレーションといった空間的表現があるのではありません。すべては、観客の内に醸成される多層的な空間表現なのです。ただ、それらは異なった空間性を持っています。インスタレーションは、それを体験する者の、見る、歩くといった身体動作、行為によって徐々に空間が生み出されていきます。一つの具体的な空間に想起の空間が重なっていきます。それは、一つの白日夢、現実の空間への夢の侵入にも似ているようです。


こんな夢を見た。
二つの部屋。一つは明るく、一つは暗い。
似通った二つの部屋で、静かな機械音をたて、二つの回転台が回っている。
細長い部屋の突き当たりに一つの窓、一枚の黄色い布が風に揺れている。
外は明るい。
二つの部屋が重なり始める。
わたしは、どちらの部屋にもいない。

◆◆
夢は語りとともに失われます。自分の見た夢を誰かに語る時、幾つかの夢の破片は、闇の中に沈んでいきます。けれど、夢は語りとともに生まれもします。1人の中で失われた夢の破片が、夢を聞く人の中で成長しはじめます。

こんな夢を見ました。「3分間の沈黙」と題された展覧会。廃校になった小学校の幾つかの教室に、何人かの作家やグループが作品を設置していました。その中に、似通った細長い二つの部屋があったようです。

『3分間の沈黙のために……人─自然─テクノロジーの新たな対話』p.28-29

関連展覧会:
  • t12 日本・オランダ現代美術交流展 「3分間の沈黙のために……人・自然・テクノロジーの新たな対話」(東京)


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