アーティスト・シンポジウム「根の回復に向けて ─ 外在する芸術/内在する芸術」

日時:1996年6月15日
会場:旧赤坂小学校(東京都港区赤坂4-1-26)
パネラー:安藤 泰彦、小杉 美穂子(KOSUGI+ANDO)、有地 左右一、笹岡 敬、佐藤 時啓、千崎 千恵夫、浜田 剛爾、水嶋 一江、保科 豊巳、松枝 秀晴、Paul panhuysen パウル・パンハウゼン、Guus Koenraads フース・クーンラーツ、Christiaan Zwanikken クリスチャン・ズワニッケン
司会:天野 豊久

 


■ はじめに (▲先頭に戻る)

酒井信一(主催者:ICAEE代表)── ここでいう「根」というのは、明確に示唆することはできません。ただし、日ごろ生活をしていくなかで、根の喪失感のようなものを多くの方が抱いていると思います。そういったものを展覧会の作品を通じて互いに探っていこうという目的で、このシンポジウムは開かれています。まず皆さん、作品をご覧になってさまざまな疑問や質問があると思います。それを参加アーティストに積極的にぶつけてください。アーティストがそれに答えることによって、ここにもうひとつ、コミュニケーションの場面を創りたいと思います。

 

天野豊久(司会)── このシンポジウムは、皆さんとアーティストの対話の場です。ですから、聞き手ではなく話し手になっていただきたいのです。展覧会をご覧になってさまざまなことを感じられたと思います。自身で感じたことを、ここにいるアーティストたちに投げかけてください。
「根の回復へ向けて──内在する芸術/外在する芸術」というのが、このシンポジウムのタイトルです。「根の回復」は展覧会のテーマにもなっています。非常に簡単にいえば、我々が自身の身体で物事を感じる、それを大切にすることだと思います。現在の社会は情報が先行し、物事を判断する際、それが人の考えたことなのか、自分が考えたことなのか、それすらも見失うことがあるのではないでしょうか。このシンポジウムは、今回の展覧会の体験をとおして皆さんが何を感じたのか、そしてアーティストは小学校という空間の中でどのようなことを感じ制作していたのか、それを互いに問いかけることによって、情報だけで何かを解釈していくのではない、実感のこもった表現の意味をみつけるきっかけになると思います。
「内在する芸術/外在する芸術」というタイトルは、一見すると非常に抽象的に感じられると思いますが、「外在する芸術」とは社会的に、あるいは歴史的に位置づけられている芸術という意味です。「内在する芸術」とは、アーティスト自身、そして皆さん自身が作品と対峙したときに心の中で抱くイメージといえるでしょう。そのイメージは、ここでいう「外在」と必ずしも一致するとは限らない。場合によっては矛盾を引き受けていくこともあると思います。しかし、自分のイメージと社会につくられているイメージが結びつかなかったとしても、その結びつかない矛盾を引き受けることすら、表現の一部となり得るのです。さらに、外側に向けた芸術の意味と内側に向かっている芸術の意味とを照らし合わせることによって、芸術表現の意味をみつけていくことができるのではないでしょうか。もし回答が出なかったとしても、その方向性を見出すことはできると思います。このシンポジウムは、その方向性を探っていく場として設けられました。まず、皆さんの質問からはじめていきたいと思います。

シンポジウムの録音記録より(カタログ未収録)

関連展覧会:
  • t06 日本・オランダ現代美術交流展 「NowHere」(オランダ展)
  • t08 日本・オランダ現代美術交流展 「根の回復として用意された〈12の環境〉」(日本展)


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