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『ASAKUSA E (浅草へ)/Orientation 50°Nord』カタログ(1991) 所収日本人は、庭に木や石、水等を持ち込んで鑑賞することを好みます。それらの表面に映ろう変化を楽しむ為です。変化とは、物が時間とともにしかあり得ないことの証であり、日本人はそのことを “もののあはれ” として文化の根幹としました。一方、西洋の近代化の理念を担った科学は、三次元空間で発見されたものであり、生命=時間を停止することで見えたものでした。従ってより新しく便利なものが優れたものであり、古いものは解体されるべきものでした。しかし実は、捨て去られた物はその瞬間に生命=時間を回復するのです。今展の会場として選ばれた旧金竜小学校(廃校)は、まさにその解放されたエネルギッシュな場であり、“もののあはれ” が漂う美しい空間です。私は、その美しさに溺れることなく、動き始めた生命=時間を抽出してみたい。